2025年6月7日(土)
長谷川町子記念館 ミーティングルーム
講師:下中 菜穂 氏(造形作家。もんきりと伝承切り紙研究家。昭和のくらし博物館副館長。)
造形作家、もんきりと伝承切り紙研究家であり、「こより」にも造詣が深い下中菜穂先生をお招きして、「こより」のワークショップを開催しました。
長谷川町子は「こより」細工をモチーフにしたイラストを多く描いていましたが、中でも『新やじきた道中記』の単行本には最も多くのこより細工の挿絵が描かれています。そんな町子さんが好きだったこよりのことをもっと深く知りたい!と、企画展にあわせて開催しました。

みんなで自己紹介をした後、まずは下中先生がこよりのさまざまな呼称と用途を、実物を交えて教えてくださいました。かつては書類を綴じたり、値札に使われたり、七夕の短冊や元結、キセルの掃除など昔からこよりがさまざまな日常のシーンで使われていたことを知りました。

そして、いよいよこより作りの開始!
細く切った和紙を両手の親指と人差し指を同時に動かし、集中して慎重に撚(よ)っていきます。一見簡単なようでも、ピンと立つ美しいこよりを作るのには何度も練習が必要です。
慣れてきたら色とりどりの和紙で挑戦。美しい和紙を前に、どの色にしようかと迷ってしまいます。


いくつもこよりを撚って慣れてきたら、次のステップへ。当初の予定では、和紙の帳面を制作する予定でしたが、先生が見せてくださったこより細工の「こより犬」を目にすると、皆さんこちらを作りたい!と希望され、「こより犬」作りから始めることになりました。「こより犬」はまさに町子さんのイラストにも登場しているものです。

長く撚ったこよりを半分に折り、さらに撚って作る「こより犬」。ちょっと苦戦しながらも皆さんが思い思いに作られた「こより犬」はシンプルながらも味わいがあって、とってもかわいい!

続いては、帳面作りです。
和紙を束ねたものに千枚通しで穴を開け、自分で作ったこよりでまとめます。こよりの結び方も蝶結びにしたり輪っかを作ったりと個性が出て、それぞれ素敵な帳面ができました。


長谷川町子の作品の中には現代ではなかなか見られなくなった昭和の暮らしが描かれています。暮らしに必要な手仕事であったと同時に手遊びにもなるこよりは、まさにこれからも大切にしたいものの一つです。また、下中先生からは「昔の手仕事を知り、昔からあるものをうまく生かすことはエコにつながる」とも教えていただきました。
終始和気あいあいとした雰囲気の中で、大切にしたい昔の手仕事に触れることができた素敵なワークショップでした。